スペイン 雑感

図書館再考(最高)

 

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平凡社という出版社から太陽という雑誌が出版されていました。写真の雑誌は最終刊だったようで、特集の北欧デザイン目当てに購入。夜開いている図書館(冬眠図書館)という短い文章が掲載されていました。当時、架空のその内容にとても惹かれていたので、捨てずにとってあった雑誌を20年近く経って、日本の家の荷物の中から発掘したというわけです。どなたが書いたかわからない文章を勝手に載せる訳にはいかないので記事の写真を載せることはできませんが…検索すると何かしら出てくるので興味がある方は探して見てください。やはり気になっていた方もいたのだな、と知りました。日本に住宅ローンがまるまる残っている(笑)小さい家があるのですが、もし帰れる時が来たら、玄関にロマネスクのZodiaqueの本を並べて小さな書店を開いてみたい、とたまにうわ言のように言っています。このサイトでいろんな物を紹介していますが、そういう細々としたものも売りたい…(笑)。

ここ数年、いやいや数十年、貪るように本を読むことがなくなってしまいました。子供の頃、本を読むことがとにかく好きでした。幼少の頃は公民館に本を借りに行き、そのうち行動範囲が広がり、図書館に行くようになり、通学路の途中に小さな図書館ができました。テーブルと椅子があって、みんなが黙々と何かをしているそこに自分も身を寄せる。勉強が捗った記憶はあまりないのですが、図書館に行くことが好きだったのだと思います。今でも実家がある街で一番大きい、改築前の古い図書館の木の床、開け放された大きな窓、目の前に広がる庭と目の前を流れる小さな川の風景が思い浮かびます。新築後も決して悪くはないのですが、なんだろう?建物かな?ちょっとモダンすぎるのかも。ここは地方都市にしては蔵書が揃っていると思います。今でも帰国すると必ず一度は行くお気に入りの場所です。多少観光地なので場所は内緒。

 

 

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スペインで暮らすようになり、自由だなあ…とつくづく感じたのは、以前に書いたConde Duqueという複合施設?(図書館やらコンサートの小さなホールや楽器の練習室がある)の読書スペース(上の写真)です。

ヨーロッパの若者は駅だろうが、ところ構わず電源をとって充電したりするのを見かけますが、日本の図書館は今どうなんでしょう。メトロ内やホームにUSBの差込口が設置され、無理やりどこかに繋いで充電をしている姿は見かけなくなりましたが、そうだよね…こういう寛容さは素晴らしいと思います。だってパソコンは学ぶためには必要。

ここは大きな縦長の窓に一人掛けの椅子が数メートルおきに設置されています。椅子が二つある場所もありますが、完全に一人スペースが保てるのが良い。定期的に警備員が回ってくるので、ぐーすか寝ていると注意されますが、この一角でぼんやりと考え事をしたり、美術書を眺めたり、楽譜の図書館と併設なので音源を聴きながらスコアをみたり。座る場所によって景色が違うのですが、目の前は一般公開している豪邸の庭の側だと大きな木の葉の色の移り変わりを眺めるだけでどれだけ慰められたか。色々辛かった時だったので、本当に足繁く通った場所です。

 

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この島には5年前に初めて訪れました。夫の学会についてきたので、日中は一人で島をうろうろしていたのですが、その時上の写真の広くて開放感のあるガラスに覆われた図書館をみてびっくりしました。もっと驚いたことがあって、この図書館、24時間開いていると書いてあったのです。当時これはすごい!と思ったことを覚えています。島は失業者もかなり多いらしいのですが、手厚い市民サービスだと感心しました。実際暮らすようになって、この図書館は自宅から多少離れているので、頻繁に行くことはないのですが、日中行くとかなり眩しいことがわかりました(笑)。こんなビーチにいるような状態で集中できる?と思ってしまうほど。日除けのシステムはあるのか?蔵書も結構陽焼けしています。一度夜に行ってみようと思っていたところ、このたびの災い。知り合いに聞いた話では、確かに24時間開いているが、ホームレスがトイレで洗髪?をするらしく、男子トイレは床が水浸しなのがちょっと…のようです。

 

 

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クロウタドリ

 

家から一番近い図書館は目の前が大きな公園です。ここも小さな展示スペースと映画(だと思う)の施設やらと併設されていて、図書館自体は大きくないのですが、窓から鳥の声が常に聞こえてきます。ヤシの木、流血樹、この島ではよく見かける赤い花などの大木が咲き乱れています。水蒸気はどこに行った?というくらい真っ青な空を眺めながら、それら木々に集まる鳥の声が図書館にいて聞こえる…最高です。鳴き声が美しいのはクロウタドリ。メシアンの作品に同名の曲があるのですよ。

 

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Galveias Palace Library

最後に。昨年1日だけ滞在したリスボンのホテル近くに図書館がありました。門を潜って、外からエントランスを眺めたのですが、ポルトガルらしい青いタイルが非常に印象的でした。施設の写真をインターネットで見ましたが、ここもまた素晴らしい場所のようです。中庭をちらっと歩道から見えましたが、是非一度訪ねてみたい。

居住者でなくても、誰でも訪れることができる。言葉がわからず読むことができなくても、目や感覚で楽しめる本もある。図書館は本当に最高だと思う。