前へ次へ

備忘録/ Memorandum

【スペイン・この3,4年音楽所感】

*画像は拡大できます。
スペインに来てからの全てに馴染めなかった日々に、潤いと色を与えてくれたのは "音楽" と言うとカッコよくて大げさですが、Fundación Juan Marchという財団でした。当時の大家さんの友人に教えてもらったのがここを知るきっかけでしたが、毎週何かしらのコンサートを催しています。入場は無料、私が足繁く通ったのは日曜日と月曜日の若い演奏家のコンサートでした。約1時間の小規模ですがパイプオルガンを備えた立派なホールで、満員の場合はライブ演奏を隣のホールのプロジェクターで投影の場合もありました。現在は事前予約制になり、予約を取ることが難しくなっています。
この財団は音楽だけでなく、美術展や哲学、文学などにも力を入れており、展示やセミナーを行っています。ヨーロッパはお金持ちの種類が日本とは桁外れに違うのか、個人の財団がこれだけにまで発展する財力は計り知れないです。施設がある場所は立地も良く、東京で例えるなら青山でしょうか...コンサートが終わって小さなお店のウインドウを眺めながら歩くのも楽しめる場所です。
Fundación Juan March:アーカイブも充実しています。




収集可能な範囲で、聞きたい演奏家が訪西した際はコンサートに行きました。スペインに来た当初、ベートーベンの交響曲7番をズービン・メータの指揮で、直前の割引50euroで行きましたが、今はそんな高い席絶対に買わない(笑)、日本の感覚で安いと思って行ったことが懐かしいくらいです。
Juan Marchに通いだしてから、割とすぐに感じたこと。好きな音楽をLiveで聴いているのに、ああ、素晴らしかった、と、しばらく余韻に浸っていられるような体験がほとんどありませんでした。自分は大した演奏もできないのに偉そうにですが、何と説明すれば良いのか、演奏はもちろん悪くない。ですが、心を揺さぶられるような演奏に巡り合うことが若手でもプロでもほとんどなかったといっても過言ではありませんでした。それはMadridに限らず、Barcelonaの交響楽団の常任指揮者に日本人の大野和士さんが就任され、ヒラリー・ハーンとの共演を楽しみに行ってみました。バイオリンとのブルッフは今ひとつで、そのあとのラフマニノフはとても良かった。スペイン人はどうもドイツ音楽の系統が苦手なのか?と思うようになりました。
子供の演奏会を聴きに行く機会もあり、小中高生、大学生もいたのか、日本ではあまり見ることがない?凄いミスの発表もあり、繰り返し練習に耐えうる忍耐力がある子供が少ないかもしれない、と私のバイオリンの先生の感想もあって、そうかもしれない、と思ってみました。情操教育として音楽を習わせるよりも運動や乗馬という選択が多いのも事実のようです。
つい先日。Madridにヒラリー・ハーンが来ることを当日知り、安いチケットを押さえて行ってきました。超満員。バイオリンとのメンデルスゾーンはさほど...でしたが、ラヴェルのバレエ音楽ダフニーとクロエ、素晴らしかった!指揮者はとても若いスペイン人だったのですが、後で彼の新聞のインタビュー記事を読んで自分なりに納得。ドイツ、オーストリアとの比較をしており、彼は歴史の違いと述べています。ラヴェル自身スペインとの国境近くのフランスの街の生まれです。スペインはバスクの特徴にも現れているように、本質を揺さぶる何かがそこにあっての演奏だったのかもしれません。天才型が多いのか、不思議な国民・民族性の集合だと改めて感じる日でした。
El País:スペイン新聞記事