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備忘録/ Memorandum

【2016残暑 9月:Conde Duqueという場所】

*画像は拡大できます。
仕事を辞めて定期券を持たなくなってから、外出の際目的地まで行くのに徒歩で向かうことがほとんどなのですが、たまに結構な距離を歩くこともあります(夫には時間が勿体無い、ケチだ等言われます)。ヨーロッパにおいて2、3駅は大した距離ではないのはMadridに限らずのことかと思います。この街の様子も来た当初よりはわかってきたので、自分にとって心地よい場所がいくつか出来ました。タイトルのConde Duqueは伯爵の称号の意で、施設の名前でもあり、好きな区域のひとつなのですが、Plaza(ちょっとした広場)とカフェテリアと周囲の建物が良い感じの場所です。以前に書いたSan Isidroの陶器の市も付近の広場で催されます
元は兵舎だったというこの場所は、約59,000㎡広大な敷地に多目的ホール、一般的な公共図書館と専門図書館がいくつかと現代美術館などが併設されています。その兵舎としての歴史は1717年に遡り、フランスブルボン家出身の最初の王、Filipe Ⅴ世が建築家Pedro de Riberaに600の軍警備員と400の馬のための部屋の製作を委託しました。ファサードはバロック様式、長方形に建物が配置され、写真のように広い石畳が広がっているのはかつて馬のための場所だったのでしょう。
2011年にリニューアルしているそうです。


専門図書館のうちの一つに、音楽研究者Víctor Espinós Moltó(1875-1948)の名を冠した音楽図書館があります。貸し出し可能な楽譜や書籍に加えヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、フルートなど楽器の貸し出しも。練習ができる小部屋も16室あり、防音性とそこにあるアップライトピアノの調律は今ひとつですが、声楽や金管楽器の練習をする人もいて順番待ちの時もあります。私は今年ピアノの部屋の予約を入れました。長い間弾いていないので思うように指が動きませんが、再び生活に音楽が加わったことが嬉しくて、週に3回の利用限度にピアノ1回、ヴァイオリン1回と通い始めました。
Conde Duque内の公共図書館にあって中庭を見ながら大きな窓の前に座れるこのコーナーはこの上ない読書空間です。スペイン人の特に年長者は本を読む人はやたらと読むけれど、読まない人は一切読まない、代わりにトランプなど、集まって何かをすることが好きな人が多い、という話を聞いたことがあります。学生は熱心に勉強していますが、他はいつ行っても人があふれんばかりにいるのでもなく、まばらでちょうど良い感じです。スペインの経済はなかなか上向かないですが、芸術、文化の面での懐の深さ、市民への自然な浸透は、昨今の日本での美術展に大挙するそれとは少し違った何かを感じて享受する生活です。
Conde Duque